●「勤務時間」とは
今度は、「勤務時間」とは何かを確認しましょう。
【最高裁一小判 2000.3.9】 労働時間とは、労働者が使用者の明示または黙示の指示によって、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。 |
教員の時間外勤務の内容は、先ほどの文科省調査で明らかになった教材研究・テスト作成・テスト採点・通知票作成などの教育業務です。
そもそも労働時間に該当するか否かの判断については、「自主的・自発的であるかどうか」は直接に問題となりません。
使用者の指揮監督下の業務であるか、明示若しくは黙示の指示によって行われた業務であるかが問題となるのです。
先例でも、次のようなものがあります。
▶ 業務が所定労働時間に終了し得ず、残業が恒常的となっていたと認められるような場合には、残業について具体的な指示がなくても黙示の指示があったと解すべきである。 (名古屋地裁1991.4.22)
▶ 使用者が労働者に対し労働時間を延長して労働することを明示的に指示していないが、行わせている業務の内容からすると、所定の勤務時間では業務を完遂できず、納期を考慮すれば、労働時間を延長して労働することを黙示に指示した。
(東京地裁1999.7.13)
▶ 客観的に見て正規の労働時間内ではなされないと認められる仕事が指示され、法定労働時間を超えて勤務がなされた場合には、時間外労働となる。
(労働基準局長回答1950.9.1)
▶ 休憩時間とは単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱うこと。
(労働省通知1947.9.13)
つまり、教員の業務の全体は学校長の包括的な承認と指揮の下(校務分掌の確定とその遂行)にあるとされ、それが仮に「自主的・自発的形態」でなされていたとしても、教員の業務の全体量が時間内で終わらない実態にあれば、当然に「労働時間」と言わなければならないのです。