限定4 項目の業務の内容は、平18・6・30 教職第238 号「義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置に関する条例等の運用について」により以下のようになっている。
2.学校行事に関する業務
学校行事とは、学芸的行事、体育的行事及び修学旅行的行事(宿泊を伴うものに限る。)を指し、いずれも当該学校における学年度当初に計画され、その学校の実施する教育課程に組み入れられた当日の行事をいうものである。この場合における学校種別ごとの学校行事とは、それぞれの学習指導要領に定める前記学校行事に相当するものである。なお、修学旅行的行事には、林間、臨海学校等が含まれるものである。
甑島遠足は、日帰り遠足です。
時間外勤務は命じられません。
命じれば、給特法違反になります。
甑アイランド事業の勤務上の問題
公立学校職員に時間外勤務を命ずる場合は、「臨時または緊急にやむを得ない必要があるとき」に限られています。
甑アイランド事業問題の争点は、下の通知の解釈にあります。
●義務教育諸学校等の教育職員の給与に関する特別措置に関する 条例の施行について(通知1971.12.23)
2 時間外勤務を命ずる場合 臨時または緊急にやむを得ない必要があるときに限る(条例6条2項) (2) 学校行事に関する業務 なお、これらの業務の具体的内容および、臨時(A)または緊急にやむを得ない必要があるときの判断基準は、次のとおりであること。 (2) 学校行事に関する業務 ① 修学旅行・集団宿泊指導 ② 休日の正規の勤務時間における学芸会(文化祭)および運動 会(体育祭) ③ 学芸会(文化祭)、運動会(体育祭)(B)および遠足の場合に、機械の故障、電力事情、天気の急変(C)または交通機関の都合により、正規の勤務時間をこえる業務
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1.解釈の前提・原則
① 1971年給特条例制定当時の趣旨について、解釈は対立している。
(当時のことを知っている人物は双方におらず、正式な記録も残っていない)したがって、法令・通知の厳正な解釈に頼らざるをえない。
② 法令は、一義的なものでいろいろな解釈があってはならない。
つまり、条文を基に、常識的(社会通念)な解釈を前提としている。特異な解釈はしてはならない。
③ 通知は、法令の解釈を具体化するものであり、法令の趣旨を逸脱してはならない。
④ 項目の立て方、接続詞の使用法にも法令上ルールがあり、忠実に運用解釈する必要がある。
2.解釈(「または」「および」の法的解釈)
(A)「または」
選択的接続詞で同種同レベルに使用します。
例えば、「リンゴまたはミカン」「人種、信条、性別、社会的身分または門地により(憲法14条)」となります。
「臨時または緊急にやむを得ない必要があるとき」の場合、臨時とは“定期ではない。一時的”、緊急とは“事が差し迫っている状態”を指します。
「臨時」と「緊急にやむを得ない必要があるとき」は意味が違うので、どちらか一方の場合を選択的に指すことになります。つまり、内容を吟味すれば、次の解釈が常識的に成り立ちます。
・「臨時」とは、①修学旅行的・集団宿泊指導 ②休日の正規の勤務時間における学芸会(文化祭)および運動会(体育祭)を指す。
・「緊急にやむを得ない必要があるとき」とは、③学芸会(文化祭)、運動会(体育祭)および遠足の場合に、機械の故障、電力事情、天気の急変または交通機関の都合により、正規の勤務時間をこえる業務を指す。
ここで、②と③に「学芸会(文化祭)、運動会(体育祭)」と2度出てくることから、②と③の内容はもともと異質なものであることがわかります。
あえて、③のなかに、「臨時」と「緊急」を混在させ、解釈を混乱させる必要性は認められません。したがって、条文構成からも、③は「緊急」を指していることは明らかです。
(B)「および」
並列的接続詞で同種同レベルに使用します。
例えば、「リンゴ、ミカンおよびメロン」「生命、自由、および幸福追求に対する国民の権利(憲法13条)」などと使用します。
つまり、③学芸会(文化祭)、運動会(体育祭)と同種同レベルであるから、「および遠足」も緊急と解釈できます。
万一、市教委の思惑通りなら、ここは段階の異なる際に使用する「ならびに」でなくてはなりません。
例えば、「リンゴ、ミカンならびにサンマ」「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。(憲法72条)」と使用されます。
(C)「または」
ここでも選択的同種同レベルの接続詞です。
「機械の故障、電力事情、天気の急変」と同種ですから、「交通機関の都合」も「緊急」を指すことになります。
万一、市教委の解釈にしたければ、別レベルの際に用いられる「もしくは」を使用して、「機械の故障、電力事情もしくは天気の急変、または交通機関の都合により、正規の勤務時間をこえる業務」としなくてはなりません。
例えば、「リンゴもしくはミカン、またはサンマ」「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。(憲法31条)」となります。
以上をまとめますと、通知文の構造は、下図のようになります。
3.結論
結局、市教委の望む解釈(遠足も交通機関の利便によって、計画段階から臨時に時間外勤務を命ずることができる)が成立するためには、通常、以下のような通知にならなくてはならないのです。
(2) 学校行事に関する業務
(臨時) ① 修学旅行・集団宿泊指導 (臨時) ② 休日の正規の勤務時間における学芸会(文化祭)、運動会(体 育祭)および遠足の場合に交通機関の都合により、正規の勤務時間をこえる業務 (緊急) ③ 学芸会(文化祭)および運動会(体育祭)の場合に、機械の故障、電力事情または天気の急変により、正規の勤務時間をこえる業務
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以上の解釈は、法律の専門家であれば、何も特別なものではありません。
たかが接続詞ひとつですが、この場合の接続詞は「基礎法学」という分野の中では、契約書等を作成する際、知っておかなくてはならない常識中の常識でさえあります。
なにより、薩摩川内市自らもホームページ上に『わかりやすい公文書を目指して』という手引書を公開していますが、その中でも(P21)、「または」「および」「もしくは」について、その違いを明解に峻別して解説しています。
自らの解釈が自己矛盾を引き起こしていることにお気づきにならないのか、ご都合主義なのかどちらかのようです。